追い詰められた宿敵百物語組の山ン元が、なんと自分自身を妖怪にすることで百物語を完成させるという展開に読者は驚きを隠せない、ぬらりひょんの孫19巻。
妖怪となる過程の山ン元の身体の各部達が本体から離れ、江戸の街の人々や子供たちを襲いかかりますが、奴良組の面々は必死に護ろうと戦います。
今回は、百物語組と奴良組が死闘を繰り広げ、無事に街の人々を護れるかどうか展開から目が離せない、ぬらりひょんの孫のネタバレ19巻のあらすじと感想をお伝えします。
ぬらりひょんの孫ネタバレ19巻のあらすじ
宿敵百物語組 山ン元
百物語組の黒幕山ン元と主人公リクオの父親鯉伴(りはん)が対時し、山ン元はこんなはずではなかったと、かなり追い詰められます。
あまりの苦戦に山ン元は自ら妖怪となり江戸の街の人や子供を襲いにかかります。
なんとしても自分の欲望を満たしたい山ン元の姿には、筆者が物語の中で度々取り上げている人間の私利私欲や醜さが絶妙に描写に映し出されており引き込まれます。
そして、周りの人間や妖怪等弱いものを巻き込み悲運な戦いを生み出してしまっているのだとメッセージ性を感じます。
また、追い込まれた山ン元が妖怪となり巨大な化け物になり襲いかかってくる展開に、一瞬、日曜の朝に放送されている戦隊ヒーローもののテレビ番組の悪役が、窮地に立つと巨大な姿になってヒーローに反撃を挑む姿と重なります。
シリアスな描写にも関わらず、思わず鯉伴も巨大な姿に変身するのかなと期待してしまったのは私だけでしょうか。
自らが妖怪になり身体の各部分が抜き出てしまう姿は、戦法を考えることも理性を保つこともできず、ただ己の欲望にだけ忠実に戦うしかない悲惨なものです。
戦隊ヒーローものと同じように最期はヒーローに見せ場を譲り、儚く散っていきました。
しかし、そのまま素直に決着しないのが流石のぬらりひょんです。
鯉伴(りはん)が黒田坊と盃を交わし、鬼縫い(まとい)により妖怪となった山ン元の本体を倒しますが、これから始まる鯉伴と百物語組との因縁の戦いの布石だったのです。
リクオの父、鯉伴
ぬらりひょんと珱姫の息子で半妖であり、奴良組二代目総大将として仲間達から絶大な信頼を得ていたリクオの父親。
後に羽衣狐の復活の際に邪魔な存在として消されてしまい現在は故人です。
ぬらりひょんを読み進めていくうえで、この鯉伴の存在は欠かせないキーパーソンとなっており、本巻では全巻に引き続き、その生きざまと志が色濃く描かれています。
生まれた頃から妖怪と人間に囲まれ生活を送り、自然に共存していた鯉伴は、自らの人間という弱い部分を認める強さを持っています。
その強さにより仲間を頼り共に生きていく道を選びます。
生まれた時から周りに妖怪がいる生活…現実社会ではありえない展開ですが、想像すると案外楽しいのかもしれないと魅力的に感じてしまいます。
著者のストーリー性にすっかり引き込まれてしまっているからと言っても過言ではありません。
しかし、年頃になると人間と妖怪の間でどっちつかずの自分の存在に戸惑い悩む時もあるのではないでしょうか。
そんな環境で自分の弱い所を認めることは難しいことだと思います。
しかし鯉伴は人間と妖であることを逆手に取り、自由奔放に遊び歩きつつも、百鬼夜行の主として妖怪達を束ね奴良組の全盛期を築き上げた姿に読者は清々しさを覚えます。
私たちの日常生活の中でも、自分と見つめあい弱い部分をさらけ出すことは簡単にできることではありません。だからこそ読者は鯉伴の生き方に惹かれ更にストーリーに引き込まれていくのではないでしょうか。
最期は悲しい結末を迎える鯉伴ですが、この生き方は後に主人公のリクオに大きな影響を与えることになります。
百物語編で欠かせない黒田坊
京都編では主人公のリクオに鬼纏の一つ「畏襲」を教え、普段の出入りの際には突撃隊長として活躍してきた黒田坊の過去が明らかになります。
19巻ではいよいよ主人公の父親と盃を交わし奴良組の百鬼夜行に加わる展開になります。
百物語では、元々は戦乱や飢饉に苦しむ子供たちにより
- 背が高くて、強くて無限に武器を持っている
- どんな悪者でも退治してくれ、自分たちを護ってくれる存在
として生み出された妖怪だったにもかかわらず、山ン本の策略により操られ、百物語組の大幹部として暗殺などを担っていました。
いつも子どもや女性に優しく、そのせいで時にはトラブルを引き起こすこともありましたが、相方の青田坊との楽しいやり取り等からは想像が出来ない過去でした。
山ン本から生まれた妖怪たちが子どもを襲っているところを救出したことで自我を取り戻し、鯉伴と盃を交わす場面は、印象深いシーンとなっています。
鯉伴の大事な仲間のために命を張れる本当の強さを目指す志に共感し、その後も奴良組として共に戦い続けます。
鯉伴なき後も、リクオを支える重要なポジションとなっており、次巻での活躍にも目が離せなくなっています。
新章・現代の百物語編へ
300年前の百物語組と奴良組二代目総大将の鯉伴との戦いから現代に戻り、主人公リクオの舞台と変わります。
件の予言を信じた人々が携帯電話やインターネットを利用して情報を広め一斉にリクオを攻撃します。
現代社会でソーシャルネットワークが広く普及されたことにより、情報を錯綜させる戦法の百物語組の戦い方も現代風に進化せいてきているなと感心してしまいます。
今までは、人間に害をなす敵に対し攻撃や討伐をしてきましたが、今回の敵は相手が人間という新たな展開です。
リクオがどのような対策を取って戦い進めていくのかが今後の見どころなってきますね。
また、百物語組はリクオを変身させるため、偶然底を通りかかったカナに襲いかかります。友人を護るため、や無負えず目の前で妖の姿に変化し、夜の姿を見られてしまいます。
ついに、この時が来てしまったかといった展開ですが、むしろよく今までバレずにいられたなと感心すらしてしまいます。
その後園潮と柳田に初対面したリクオは、二人が東京を舞台にした鬼ごっこの条件として町の人々を人質に取られてしまいます。
夜明けまでに百物語組7人の幹部を見つけ撃破するように迫られかなり切迫した状況となります。
こちらに不利な条件に思えますが、リクオは奴良組総動員で幹部を発見しつつ人間を護る戦いに全力を尽くします。
今の社会は個人が情報を自由に発信できるので、様々な情報が飛び交います。リクオの友人の清継くんも映像を見て愕然とします。その表情からは友人リクオを想う様子が見え隠れするような…清継くんとの友情も守られ、街も人々も守れることを願わずにはいられません。
百物語編では最近では控えめな登場だった主人公の学校の友人が多く絡んできます。
今後の物語にも深くかかわっていく気配がすることから、きっとリクオを救うアクションを友人達が起こしてくれるような気がします。
熱い友情が更にストーリーを盛り上げてくれるのではと、期待が高まります。
つづきの、ぬらりひょんの孫20巻はこちら。
ぬらりひょんの孫19巻の感想
主人公の父親である鯉伴と百物語組との300年前に繰り広げられた死闘の様子に圧巻の19巻でした。
主人公リクオが、三代目奴良組の百鬼夜行の発展を目指す上で欠かせない存在の、鯉伴のひととなりについて語られた貴重な巻となりました。
後半ではリクオが同じ人間である人々に襲われ、学校の友人に自分の正体がばれてしまう等、常に目が離せない状況です。
この状況に対し主人公がどのように解決策を見出していくか、また、百物語の背景に見え隠れする今後の動きが気になります。
今までも、いたる所に今後なにかしら起こる伏線なのではと思わせてくれる展開が数多くありました。次巻も読者を裏切らないストーリー展開に期待大です。